担任を持つと、学級通信を発行します。どうせ時間をかけて作成するならば、子どもにも保護者にも、そして自分にも価値のある学級通信にしたいと思いますよね。
もちろん、闇雲にかいていてもそんな価値のある学級通信は作成できません。学級通信を発行するそもそもの目的を理解していないからです。
長い間教師をしていると “この先生、学級通信作るの上手だなぁ” という方に何度かお会いすることがあります。その先生が作ったものと自分の作ったものとは何が違うのか見比べた結果、内容、そしてタイトルまでも違うことが分かりました。
価値のあるものにするためにポイントを紹介しようと思います。少しでも良い学級通信を発行できるようになりたい方必見です。
学級通信を発行する目的
まず、学級通信を発行する目的は何なのかを自分の中で明確に持っておく必要があります。理由もなく文章を書いて発行しても、何がしたいのか分からないからです。
若い先生の中には、“他の先生みんなやっているから…” と考えている先生もいらっしゃると思います。
いい機会ですので、何のために発行するのか考えてみましょう。
一番の目的はやはり “子ども、保護者とつながる手段” だと思います。子どもたちとは出来事について振り返ることができます。一緒に考えることも可能です。
仕事が忙しく学校の様子がなかなか分からない保護者。そんな人にとって学級通信という情報手段は、とてもありがたいものだと思います。
目的が明確になると、“何を伝えたいのか” “何を伝えるべきなのか” がはっきりしてくると思います。書く内容をはっきりさせるためにも、通信を発行する目的を考えましょう。
タイトルで興味を引こう
学級通信が上手な先生とまず違ったのは、“記事のタイトル” でした。ぼくがやっていたのは典型的NG例。「○○について」や「△△への遠足」など明らかに面白くないタイトルでした。
タイトルに興味を持てないと記事を読もうとする気になれません。なぜなら、タイトルから “読んでみたい” という興味や意欲がわかないからです。
よく考えてみれば、スポーツ新聞なんてそうですよね。いかにタイトルを面白く、興味を引くようにつけるか。ここに力を注いでいますよね。タイトルが面白く、読者の興味を引けば新聞は購入してもらえるからです。
その先生の通信は、例えば遠足についてのタイトルは、「△△への遠足」ではなく「△△遠足。みんなが気づいていなかった事実を発表!!」と内容が見たくなるようなつけ方でした。
もちろん学級通信で一番読んでもらいたい、考えてもらいたいのは内容です。そこにスムーズに到着するためには、まずタイトルで興味を持たせることが何より重要です。少しタイトルに工夫を凝らして、内容までスムーズに導きましょう。
書く内容
思いついたことをつらつら書いていてもいけません。内容の核は何なのかをしっかりもちましょう。今回の通信では “何を伝えたいか” “何を伝えるべきか” ということです。こちらの思いが明確だと、相手にも伝わりやすいからです。
ただ、どんな内容を書けばいいのか新任さんや文章を書くことが苦手な方は分かりませんよね。
今回は、学級通信に使える10つのネタを紹介しますので、参考にしてもらえばと思います。
自分自身の考えを知ってもらおう
教育に対する自分の思い、子どもたちへの願い、教育的な理想や人生観など自分を開示していくことです。そうすることによって、子どもも保護者も先生の考え方が伝わるからです。
子どもたちを褒めるのであれば、どんな行動がよかったのか? その行動がなぜ良かったのか? どういう影響を及ぼすのか? などです。
もう少し具体的に言うと、
というエピソードがあったとします。
通信に書くのであれば、
みんなはBくんのこの行動どう思いますか? 先生は、困っている友達に気づいてすぐに行動できたこと、自分でやらなければいけないことを判断して行動に移せたことが本当に素晴らしいと思います。
1人ひとりが周りの友達のことを気づかって行動できるようになると、日本一、いや世界一のクラスになっていくと思います。Bくんありがとう。
というふうに載せるとBくんへの感謝の気持ちも、先生のBくんの行動に対する考え方もすごく伝わりやすいですね。
例は子どもを褒めたときの例でしたが、保護者との連携を図るためには “開かれた学級” を築いていくことが不可欠です。そのためにも “自分を開く” ことが必要です。いいことも悪いことにも自分なりの考え方を伝える癖をつけましょう。
もちろん、横柄な態度にならず常に節度を心がけましょう。
クラスの出来事
クラスでの些細な出来事も伝えるといいです。係りを決めたことや席替えをして並びはどうなったかなどです。理由は、仕事が忙しい保護者の方はそれを見るだけで “学校でどんなことがあったか” が分かるからです。
年齢が上がってくると隠したいわけではないのですが、学校のことを自分から話す子どもは少なくなってきます。特に男の子。
ですから、クラスの出来事を伝えるだけでも子どもと保護者との間で会話が生まれ、親子関係が良好になります。また、何かトラブルが起こったときにも学校の様子がある程度把握できていると、保護者も説明が理解しやすいので積極的にクラスの出来事を伝えるようにしましょう。
クラスの学習状況を伝えよう
どんな学習をするか、またはしているかを伝えましょう。現在最も力を注いでいる学習について、そのねらいや子どもの反応、授業のエピソード、子どもの振り返りなどです。なぜなら保護者の立場からすると、参観ぐらいしか子どもの授業の様子が分からないからです。
具体な様子を載せることによって子どもも学習を振り返ることができるし、保護者にとっても面白い情報提供となるでしょう。
学年通信などに見られる “学習予定” をただ網羅するだけでは、はっきり言って通信の中で最も読まれない箇所となってしまいますので注意してください。
学習内容を文章化することによって、自分の行った授業の振り返りにもなると思いますのでぜひ学習状況を伝えるようにしましょう。
子どもが作った作品紹介
国語の授業で子どもが考えた詩や社会の歴史新聞など、授業中に作った作品を紹介しましょう。なぜなら、大きな作品は参観などで掲示しますが、小さな作品は保護者の目に触れる機会がないからです。
ポイントとしては、どこがいいのか具体的なコメントがあると分かりやすくていいですね。掲載された子どもも喜ぶと思います。普段あまり目立たない子もこんなところでスポットを当ててあげられるといいでしょう。
ただし、同じ子どもばかりにならないように注意が必要です。必ず名簿にチェックを入れていき、一人一回は必ず登場させるようにしましょう。
いいことはどんどん紹介しよう
学級通信で一番ほっこりするのは、いい話が載っているときです。いいことを言われて悪い気を起こす人はまずいないからです。
クラス全体でよかったこと、個人でよかったこと、普段の生活でよかったと感じたことはメモに取っておいて学級通信で紹介しましょう。
具体的には、
“帰りの準備を子どもたち同士で声をかけ合って素早くすることができた”
“残っている配りものに気づいた○○さんが進んで手伝ってくれた”
“ノートをいつも丁寧に板書している△△くん 真似をするといいね”
などです。
細かいことを大きく言うことがポイントです。子どもにしてみれば、普段から当たり前のことでも大きく評価されることで自尊感情を高めることができます。また保護者にもクラスの様子がよく伝わります。
ただし、これも先ほどと同じですが同一の子どもばかりにならないように気を配りましょう。
クラスの問題をみんなで考える
“学級通信での情報発信=いつでもいいこと” とは限りません。クラス全体で考えなければならないことも載せましょう。子ども、教師、保護者みんなで一緒になって問題を考えることができるからです。
問題、悪いことも含めて保護者は学校の様子を知りたいものです。大多数の保護者は学校を信頼してくれていると思いますが、毎回いいことばかり書いていたのでは保護者の信頼を得ることはできません。
日々起こっている問題を子どもとどう向き合っているのか、解決していっているのかを有りのままに情報提供しましょう。“書き方” “取り上げ方” は重要です。否定的にならず、プラス思考で、“共に考える” “協力して解決を目指す” という姿勢で書きましょう。
学校行事のお知らせと総括
学校には行事があります。遠足、運動会、音楽会…細かい行事まであげるとキリがありません。行事についての通信を作成しましょう。行事は、子どもにとっても保護者にとっても関心が強いからです。
行事を書く時に、気をつけなければならないのは、事後報告ばかりにならないようにすることです。行事前は、忙しく通信を書く時間もなかなかとれないかもしれません。しかし、これから行われる行事について、意義やねらい、子どもたちが頑張っている姿や現時点での課題、見所などを伝えることによって子どもも保護者もよりその行事が楽しみになってきます。
また、事後の通信では子どもたちがその行事で考えていたことや感想を載せると振り返りやすくなります。行事を通して子どもたちを成長させるためにも学級通信を上手く活用しましょう。
タイムリーな話題
子どもや保護者には伝えたいことが山ほどあるはずです。ですが、唐突に話題を振っても違和感を覚えます。タイムリーな話題に沿いながら伝えたいことを上手く伝えましょう。その方が話に重みと深みが増すからです。
例えば歯科健診があると異常があった子には、歯医者さんに行くように受診票が渡されます。受診票だけ渡すと、忙しい保護者は “またコレか” と放置してしまうことも多いです。
ここで通信の出番です。受診票と一緒に通信を書きましょう。タイトルは “驚愕!!むし歯と学力には驚くべき関係があった” とでもしましょう。事実、むし歯、噛む回数が脳に与える影響は大きいです。そのあたりは家庭から気をつけてもらわないとなんともなりません。
急にこの話題を出しても興味を持ちにくいですが、歯の受診票と一緒にもらうと一気に興味が沸くでしょう。
他にも不審者情報があれば、“不審者への対応の仕方” 日没が早くなってきたら、“遊び方と遊ぶ時間”についてなどです。
何かが起こったときは、保護者に伝えるチャンスと思い通信を書いてみるのもいいと思います。
保護者の方へのお願い
学級経営をしていくうえで、保護者の協力は必要不可欠です。特に低学年では、まだ自分で解決できる能力が身に付いていないからです。
宿題や持ち物は日々の連絡帳で伝えていると思いますが、図工の工作に使う “材料集め” や行事で使う “ダンボール” など時間がかかりそうなものはあらかじめ通信で伝えておくとよいでしょう。
他にも宿題の提出状況や出来具合がよくない場合は、家庭でのチェックをお願いしたり、水泳や持久走前には毎朝健康観察をしてもらうように頼んだりします。
通信で伝えるメリットとして、家庭で協力して頂かないといけない理由も明確に伝わりますし、先生が一生懸命考えてくれているという誠実さも伝えることができます。
“お願い” ですので、要求的、高圧的にならず、“先生がそう言われるなら…” と思ってもらえるような書き方でお願いをしましょう。
保護者の声を聴こう、載せよう
ここまでのことを実践してくると、こちらの伝えたいことは通信を通して伝えることができると思います。ここではその逆、保護者の声を載せるという方法を紹介します。保護者の声を載せることによって、他の人はどう考えているのかが分かるからです。
通信の右端にでも“返信欄”を作っておきます。感想や意見、叱咤激励など書いていただけるならなんでも構わないことを伝えておきましょう。
もちろん次の通信に載せるかどうかは、プライバシーの問題もありますんで “掲載 可・不可” どちらかに丸をつけてもらうようにしておくといいですよ。
単なるお世辞ではない保護者の率直な感想や意見は、ときにはグサッとくるものもありますが、教師として成長していくことのできる糧となります。真摯に受け止め、ステップアップできるように保護者の声に耳を傾けましょう。
まとめ
慣れるまでは時間がかかるかもしれませんが、価値ある学級通信を作ることができるようになればクラス経営も上手くいくようになります。こちらの想いがはっきりつたわるからです。
ポイントは “何を伝えたいか、何を伝えるべきなのか” を明確にしておくことです。
子どもは学校、家庭、地域みんなで育てます。子ども、保護者とつながる手段として価値ある学級通信がかけるように頑張りましょう。
最後に学級通信の上手な先生の著書を紹介します。実際のものを掲載されており、とても分かりやすいです。手元におきながら通信を書いていってもいいと思える一冊です。
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